チャプター3の一部:Crossroads・分岐点
ポッター・クロフトの不思議な冒険 -前編より-



未来のポッターは、強い目的を持ち、ショボイ名前という重荷を背負い、お役所手続きの恐怖に悩まされ、そのうち明らかになるように、とてつもない恋煩いをしていた。あらゆる意味において、この「現在」にいる青年は、未来の自分のまさに対極にいた。現在の彼はM&Hのブレザーの下から下品な英語が書かれたTシャツを見せびらかし、ユニキロで購入したフェドーラっぽい帽子をかぶり、視覚のためというよりはファッション用の四角くて赤いメガネをかけ、それに合わせるかのような真っ赤なパンツをはいていた。つまるところ、彼は日本においてよく見られる「無目的長期滞在ガイジン」の典型例なのであった。

上記のような人間像ではあるが、ポッター・クロフトの人生はまさに分岐点に差し掛かっていた。いや、文字通りに。彼は今、渋谷の中心にある世界で最も有名なスターバーの席に座り、クランブル交差点を真正面に臨む窓から景色を眺めている。スクランブル交差点というのは6方向の道がクモの巣のように交差している道路で、あまりにもカッコいいもんだからとうとうイギリス人がパクってしまったという代物だ。

まあ、考えてみれば分岐点の文字通りの意味だけでなく、もちょっと比喩的な意味も当てはまる。これは何故かというと、24歳になったばっかりなポッターはちょっとだけ不安になってきたのだ。悲しいスペース・オペラのサウンド・トラックが心の底で響きながら(実はただ単にi-pedに流しているが)、彼がこのままの人生で本当にいいのかという事を真剣に考え込んじゃった。私から見ると、ちょっとオーバーにドラマチックだけどね。日本だって、素晴らしい国なんじゃないですか?美しい人がいっぱい居るし、コーヒーは無限大・飲み放題だし、世界最大のアニメの主等だし・・・好きな所たくさんあって問題は全く分からないね。

大学を卒業してから、ポッターの世代の多くの人は残念ながら、所謂「無職モンスター」に食べられたのだ。それを逃げるために、とりあえず外国で英語の先生になろうとしていた。特に何故日本を選んだかというと、彼が生まれる前にお母さんには日本人の友達が居たからだ。ポッター自身が小さすぎて覚えがないけど、帰る前に御土産として何故か剣玉をくれた。色んな意味で、若きポッターにはその玩具が永遠に興味深い代物だった。その物はばかばかしくてでカッコ良くて、正直使いにくかったが、持っているとアリゾナ州の行き止まりの砂漠的な存在を越えて、エキゾチックな世界を見る事ができた。ずっとあの世界を体験してみたかったけれど、随分遠い所に来てしまった。日本に行っても何故かスターバー。しかも、一人でスターバー。人生という道はどうしてこんなに曲がってきたんだろう?

★★★


アホTシャツによると彼は「I’m a Legend in Japan・俺は日本での伝説の男だ」なんだが、結局伝説でもなんでもない。その時からずっとずっと部外者で、ちゃんと目標を見つけるまではどこにも馴染まない人だと自分でも思った。良いことに、以前言ったように、ポッターには特別な「プラスアルファ」があるから。その力は何だかをなかなか教えてあげないのはゴメンね。私のタイミングがありますので・・・

ポッターは「自分が人と違う何かがある」と腹から感じたが、その潜在を明確させるような、メンターが必要だと思う。それでも、ファンタジーに良く出るような年寄りの魔法使いはイヤだなと。もしメンターが突然に現れたら、やっぱりレザーブーツを入ったのりか藤原の方が好みかな。年を取っているけど、なんとなく優しくて厳しい。それに、ポッターは面食いだ。残念ながら、人は実際に自分の合うメンターを選べない。彼女(イヤ、この「個人的な冒険」のストリーに出るのは大抵男だ)はとにかく一番期待されない時に突然に邪魔しにくる。例えば、スターバーに一人きりで落ち込みたい時・・・

「お〜い、ポッター・クロフトくん!」とポール・バンヤン似の男がいきなり大声をかけてきたので、ポッターの周りに居た人たちが逃げちゃった。彼はパンク・ロックの格好をし、山男みたいに赤くて、もさもさした髭が生えていた。木のように背も高く体も大きい。そのカッコで怖わがらせるのが目標かも知れないが、顔はなんとなくサンタの様で、後ろにいる二人の男の子はまるでサンタの下っ端だ。ポッターは全然怖くない。もしかして友達が僕の誕生日をちゃんと覚えていて、冗談でこの変な連中をよこし、しばらくしたら「ハッピー・バースディ」でも歌うかなって期待していたが、そうしてくれなかったので自分でギャグでも言おうと。

「はい、僕はポッター・クロフトだよ。でも期待しないでね・・・魔法もトゥーム・ハンティングも出来ないよ。」

「シ〜〜〜ン」そんな馬鹿なカッコをしてるのにだじゃれにノッてこないのはつまらなかったが、どうやら真剣だ。真剣なんだけど、ポール・パンヤンがそれから言い出したのは全くナンセンスだ。

★★★




「クロフトさん・・・ポッター・・・ポップ・クイズ!宇宙人の、小さくて髪のないウザい種類(つまり、普段にテレビで見られる緑色な奴が普遍の中に実際に存在してるとしよう。)そのエイリアンたちは本当にキモいけれど、残念ながら彼らが動かないと銀河自体・・・イヤ、普遍までも・・・動きが非常にのろくなる。要するに、そのエイリアン建は働かなければ!そして、エイリアン達は何故か(銀河中の人々みたいに)自分の事を嫌いになり、それで働く事を完全に止める。カオス状態になる。では、あなたならどうやって問題を解決する でしょう?」

このセリフ自体はでたらめに聞こえることは言うまでもないが、それにポール・バンヤンの言い方もあんまりぴんと来ない。ただ暗記して言った感じもあるし、結構大きい問題について話しているのに「こんなに大ざっぱでいいのかな?」 って感じでもあった。細かい話をただ言い忘れているのか、それとも隠しているのかは分からない。彼の後ろにくっついてるその二人は、宇宙の問題を防ぐことよりガムを噛んだり、i-pedを聞いたりすることの方が大事らしい。

「24歳の誕生日に一人・・・じゃ、この馬鹿な話にのるか」とポッターがボーッと考えているうちに、結局大学時代のマスコミのコースを思い出した。 世界では、ある人種の全ての人の人格にいきなりダメージを起こす力は一つしかないノ『マスメディア』だ。「エイリアンたちは何を見て自分達を嫌いになったのかな?インターネット?それとも、他のデジタル放送みたいな物?」

あの髭でポール・バンヤンの口は見えにくかったが、多分への字になった。「いえ、むしろ昔のテレビ放送を見たよ・・・1960年代からだ。ファファとした60年代の髪型にはまっちゃって、自分のつるんとしたはげ頭が好きじゃなくなった!調子が戻るまでは、 ストライキ。」

ただ変なだけでなく、この会話は長すぎてポッターのラテは完璧に冷めちゃった。この連中を早く帰らせるためには、早く問題解決のような事を言わなければならない。大人気でハゲの有名人なら、あの「オンリー・サムライ」の人しかピンと来なかった。彼はSF映画にも出たが、スペースにはちょっと・・・

そうだ!宇宙関連のストーリーなら、やっぱり唯一の人物と言えば彼しかいない!「では、問題解決」とポッターが言った。「テレビでテレビに勝つ。エィリアン達にスペーストレックを観せなければならない。古い方じゃなくて、『ニュー・ジェネレーション』の方。その船長はハゲているが、カッコ良くて皆に尊敬されているんだ。」

ポッターは冗談で言ったつもりが、その三人の顔を見たら話をマジに取ったようだ。その真面目に取られた皮肉でポッターの新たな時間旅行者としての人生が始まったのだ。

<本編につづく>







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